というわけで、Twitterで行いました「Windows版白衣性愛情依存症発売記念Twitter感想企画」の
要望SS、公開します。

まずは、特別賞のアリス様ご希望の「なおグッドエンドアフター」です。

前回同様、白愛未クリアの方が読むとネタバレ全開ですので、
改行多めになっておりますので、クリアしている人だけ、読んでくださいね。
最優秀賞用SSは、もうちょっとお待ち下さいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――星の声を聴いた気がしたんだ。

あのとき。

 

 

PC版白愛感想コンテスト・特別賞賞品SS     著・向坂氷緒

 

*****

〝すばる〟

漢字で書くと〝昴〟、横文字だと〝プレアデス〟。いっこの星の名前じゃなくて、いくつもの星の集まりを指す名前で。おうし座に含まれてて、その牛の首あたりにあって、肉眼では6つくらいしか見えないけど実際は100とか200とか、そんなたくさんの星が狭い範囲に集まってる(らしいよ)そんな〝星団〟の名前。古くは清少納言さんが書いた『枕草子』って書物にも出てくる……んだって。

星なんて、いっこだけでもきれいなのに。
それがたくさん集まったものの名前なんて、すごくすごく素敵だと思った。
〝すばる〟はどうかな?って提案してくれたのは、なおちゃん。

なんの話かって? そんなの決まってます、ふふふん。

「すーばるちゃんっ」
「だー♪」
「うわーうわー、かわいい! ママまっしぐら!(意味不明)」

わたしが名前を呼ぶと、それだけですばるちゃんは満面にこにこ。

「すばるすばるすばるすばるすばるすばるちゃーんっ」
「だー♪だー♪だー♪だー♪だー♪だー♪」
「6回呼んだら、きっちり6回返ってくる……これはおもしろい」
「もー、お姉ちゃんてば、すばるで遊びすぎだよ」
キッチンから楽しげななおちゃんの声。
「てやんでい、うちの娘ってば可愛いすぎらぁ!」

親バカ大繁盛。バーゲンセール。

すばる、っていうのは娘の名前です。まだ一歳未満。
わたしの。わたしとなおちゃんの。かわいい、かわいいかわいい愛娘。
去年、産まれました。なおちゃんのおなかから。
かわいくないわけがない。だって、なおちゃんの血をひいてんだよ!?(力説)(でも、これをうかつに口にすると、なおちゃんからは猛反発)(違うよお姉ちゃんの血をひいてるからだよって)(終わらない口論)(互いに一歩もひかず)(ガチです)

帝都看護の在学中になおちゃんとは結婚して。
卒業して、すぐ作りました。「早くにほしい」って言ったのはなおちゃんだけど、わたしに異論あるはずもなく。
わたしは卒業後そのまま病院勤務がはじまって。
でも、なおちゃんはそうしなかった。うん、ぜんぶ赤ちゃんのために。

もちろん、わたしもできるかぎり協力してます。頑張ってます。

でも。

 

 

……………………がんばり、すぎたの、かなぁ…………(困惑)

 

 

それはある夜のこと。
なおちゃんの寝室で、わが娘を寝かしつけて(大抵はなおちゃんがやってるけど今夜はわたし)わたしは自分の寝室に。あ、最初は一緒でもいいよ、って言ったんだけど、病院勤務のわたしのためにってなおちゃんは譲らず。

ドアを開けて、寝室に入った、ら。

(うん?)

わたし、小首かしげ。ベッドの上、ちっちゃな山ができてました。
掛布団の山。
誰かが頭からすっぽり掛布団をかぶって、まるまってる、ような。誰がっていうか、なおちゃんしかいないんだけど。

「えーと……妹ちゃん? スイートシスターちゃん?」

呼びかける。返事なし。
寝てるっぽいなーって思いながら声を掛ける。

「それだと、ちょーっとお姉ちゃん寝れないなーって。あ、今夜はわたしがあっちでもいいんだけどね。でも、前にそうしたら、なおちゃん怒ったでしょう『ダメだよ、ちゃんと休まないと』って、だから――」

掛布団の山、ぴくりとも動かず。うん、寝てます。これ。

「んー……まいっか、今夜はわたしがあっちで」

ぴくりっ!

わたしが言った瞬間、山が動いた。わたしに抗議するように。わたしを引き留めるみたいに。うん? と、わたしは小首かしげ「なおちゃん? 起きてるの?」って声を掛けたけど、やっぱり返事なし。

ベッドに歩み寄る。どうすればいいかわかんなくて、でも、なんとなくなおちゃんが息を潜めてる気配がして、仕方なく布団に手を掛けた。抵抗されるかなって思いながら、掛布団をめくっていく。

「なおちゃーん……?」

ぴらりーって感じで、簡単にめくれた。
中にはなおちゃんがいた。
横向いて膝を抱えるみたいにして、ちっちゃくまるまってた。
じとっとした目をこっちに向けてた。
ぷくっと頬を膨らましぎみで。不満げな、そんな顔で。
そして、なんでか。可憐な唇に。

――〝おしゃぶり〟をくわえてた。

そう、おしゃぶりを。おしゃぶりを!?
かわいい、と言えば、たまらなくかわいいですけど、え? あれ?
目の錯覚かと自分を疑うわたし。錯覚じゃないです。

「……………」横目で、じとっとわたしを見てるなおちゃん。
「なお、ちゃん?」
「……………」横目のまま、じとー。

赤ちゃん用の。すばるちゃん用の。
いや、もうわが娘も卒業して使ってない、大体、生後2ヶ月から4ヶ月くらいの間によくお世話になるっていう、その〝おしゃぶり〟です。おしゃぶりをくわえたまま、なおちゃんはじとっとした目をこっちに向けてて、わたしが言葉をなくしてると、やがて、

「………………ばぶ」

なおちゃん、赤ちゃんみたいに。いいいい妹がご乱心――!?

「ななな、なおちゃん!? どどど、どうしたの!? 育児疲れ!?」

そんなそぶり、これまで一度だって見せたことなかったけど。

あわてふためくわたし。けど、なおちゃんは「……ぶぅ」って、赤ちゃんがむずがるみたいに、否定するように言って、わたしはもっと動転して、そんなわたしに、なおちゃんはじとっとした目線のまま、

「なおだって、赤ちゃんだもん」

(意味がわかりません――!!)

「……あ、あのー…………大幸なおさん?」

とにかく、なおちゃんが不機嫌になってる、でも、なにで不機嫌になってるかわかんない。育児疲れ、では、ないようだし。ただ、わたしがそうさせてるんだってことは、バカな頭でもさすがにわかって。

糸口を、探さなきゃって思った。

「わ、わたしが悪いんだよ――」
「お姉ちゃんは悪くないよ」悪いんだよ〝ね〟って言う前になおちゃん。
「で、でも――」
「お姉ちゃんは悪くない」でも〝さ〟って言う前になおちゃん。

おしゃぶりをくわえたままなんで、もごもごした声になってるけど、口調ははっきりしてて。わたしは呆然、ただ呆然。――と、なおちゃんは、じとっとした目はそのまま、瞳に自分を責めるみたいな色を滲ませて。

「なおが面倒くさい女なだけだもん」ぽつりとなおちゃん「なお、ね。すばるのことはかわいくて育児も楽しい、それに、お姉ちゃんがすばると幸せそうに遊んでるの見るの、なおの幸せ。ほんとに」
「うん……知ってる」いつもいつも、そう言ってて。心からの笑顔で。あれを疑うのはなおちゃんに失礼だと思う。
「こんなに毎日幸せなの、信じられないくらい。ほんと毎日そう思ってる。……なのに、ね」
「うん」
「…………………………………………」

黙ってしまう、なおちゃん。
『なのに、ね』その先にどんな言葉が続くのか。
わたしはじっと待つ。じっと。じっと。
なおちゃんの、言葉を。どれくらい、そうしてたか。
やがて、なおちゃんは静かに―――、

あ、いや、静かに、じゃなくて。

「ぅばぶっっ!」

ふくれっ面で赤ちゃん炸裂。そっぽ向くように顔をそらす。

「ええええええええええっっ!!」
「今のなお、赤ちゃんだもん、だから、なんにも喋れないもん!」
「って流暢に喋ってる!?」
「ばぶ! ばぶばぶばぶ! お姉ちゃんのばぶ!」

……バカって、言おうとして間違えたんだと、思います。

なおちゃん、真っ赤になって、ぐいっと顔をそらして。
下のマットに顔を埋めるみたいにしてた。
耳はもちろん、うなじまで真っ赤。まだおしゃぶりくわえたままなのは、意地なのかなんなのか。

答えなんて、ひとつしかなかった。

「なおちゃん、嫉妬してるんだ。すばるちゃんに」

言った途端、なおちゃんの肩が震えて。
マットに顔を押しつけたまま、おしゃぶりを片手で外して「もーっ!」って声を上げた。

「そゆこと、はっきり言うお姉ちゃん、きら――――――い!」
「……き、効くなー。なおちゃんに言われる〝嫌い〟」
「好きだけど! 大好きだけど! きらい!………………ぁ、ばぶぅ!」
「今、思いだしたように付けましたよね、それ」
「しらない!」

たぶん、今、パジャマに隠れてる下の肌まで、真っ赤で。

変だった。
不思議な気分だった。
おかしかった。

(これって今って、ふーふゲンカなのかな、修羅場っていうのかな)

揉めてるのは確か。わたしとなおちゃんが。

(なんで、こんなに、幸せだなー!って思ってるんだろう、わたし)

幸せすぎて笑っちゃいそうなくらい。
なおちゃんが可愛くて。
わたしは手を伸ばして、なおちゃんの背中にぽんって手を置いた。予想してなかったのか、びくんってなおちゃんの背中が震えて「ひゃんっ」って声をもらす。相変わらず敏感です(満足)

そのまま、なおちゃんの背中をなでる。優しく、そっと、大切に。

話す。わたし達の話を。

「わたし、すばるちゃんが産まれるとき、立ち会えなかったよね。病院でトラブルあって、大変で、なおちゃんも絶対来るな、仕事投げだして来たら怒るって言って。辛かったなー……あれ」なおちゃんは無言「でね、言ってなかったんだけどさ。夜、0時も回ってやっとひと段落して、なおちゃんどうしてるかなって思ったとき。聴こえた気がしたんだ、わたし」

なおちゃんは黙ったまま、だから、わたしは続ける。

「お星さまの声が。『おめでとう』って聴こえた気がした。それもね、ひとつだけじゃなくて、いくつも、いくつも」

疲れすぎて聞こえた空耳かもなんて、いくらでも理屈はつく。
輪唱みたいに。
喝采みたいに。
わーっ!って、耳元で、耳の奥で。新しい命の誕生をお祝いする声が。
無数の星のきらめきが音になったみたいに。

声になったみたいに。――わたしに届いた。

「だから、なおちゃんがいっぱいの星の集まりの〝すばる〟って名前を言ってくれたとき、驚いて、それから、なんだかすごい嬉しかった。なおちゃんにも聴こえたのかなって思って。今まで言うの忘れてたけどね、えへへ」

いくつになっても忘れっぽい、わたしです。よく看護師続いてる。

「なおちゃんが好きだよ」

話の脈絡がどうとか、ぜんぜん考えてなかった。
こんな言葉でなおちゃんが機嫌を直してくれるのかとか、ぜんぜん。
――ただ、もう、わたしの中にはその言葉しかなくて。

わたしも口を閉じて、それこそ、星の降る音が聞こえそうな静けさが。
寝室に満ちて。
やがて、なおちゃんがそっと言った。

「ぉ、お姉ちゃん」
「うん」
「……なお、ね」
「うん」
「たぶん、お姉ちゃん、すごくいい話してくれてたんだと思うけど、ずっと背中撫でられてたから、そっちに耐えるの必死でぜんぜん耳に入んなかったよ……」
「あっ――!」はっと気づくわたし。

確かに、なおちゃんの背中なでっぱなしでした。
今も(あわてて離す)
そういえば、なおちゃんの背中ずっとふるふる震えてた、ような。

「お姉ちゃんの手、きもちよすぎるんだもん……」

わあ、感動の名台詞が――!

「でも。最後のところは、ちゃんと聞こえたよ?」

ころん、と、なおちゃん、転がって上を向く。わたしを見る。
無防備に。まっすぐ。
どこか――つやっぽく濡れた瞳で。頬を上気させて。

「好きだよ、って。言ってくれた」

言うよ当然って、わたしは頷く。だって、それは呆れるほどの事実だから。
むげんのあい。
なおちゃんが言う。手を伸ばして、子猫みたいに。

「お姉ちゃん、今夜は」
「うん」
「なおのこと――……すっごく可愛がって」

その誘惑にあらがえるひとなんて。
きっと、どこにもいないと思います。この世界のどこにも。
もちろん、この寝室にも。

答えなんて、ひとつしかなかった。

―――いいよ、なおちゃん。かわいがってあげる。

 

*****

わたしとなおちゃんの自慢の娘、大幸すばるちゃん。
彼女は、とってもいい子です。できた子です。
なぜなら、すばるちゃんが、赤ちゃんらしく夜泣きをはじめたのは。
きっちり、〝その〟後でしたから。

(…………こりゃお恥ずかしい!><)

将来、きっと素敵なレディに育ちます。親バカ。

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