というわけでご無沙汰しております。
とても長らくお待たせして申し訳ございません!
忘れている人も多いと思いますので、簡単に説明しますと、

「Windows版白衣性愛情依存症発売記念Twitter感想企画」という企画がありまして、
その感想企画で最優秀賞を獲得しました「ぱぷりか」様のご要望により、
あすいつアフターSSを白愛シナリオ担当の「向坂氷緒」が書く、となっていたのですが、、、
色々有りまして今まで掛かっておりました!!

という事で「あすいつグッドエンドアフター」です。

ぱぷりか様から頂いていたお題が『いつきグッドエンド後』・『1/11(いつきの誕生日)』・『雪』でして、
頂いたのが今年の2月、冬でしたので、そのシーズンに公開出来ず申し訳ありません。
やがて来る冬を想って、読んで頂けましたら幸いです。

そして前回同様、グッドエンド後のアフター話ですので、
白愛未クリアの方が読むとネタバレ全開となります、ので、
改行多めになっておりますので、クリアしている人だけ、読んでくださいね。

ぱぷりか様及び、お待ちくださってた皆様本当に申し訳ございませんでした!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PC版白愛感想コンテスト・最優秀賞賞品SS     著・向坂氷緒(遅くなってごめんなさい!)

 

 

◆証言:なおちゃん
――え?去年の夏、ふたりが付き合うようになったときのこと?

――あはは、そりゃいい気はしなかったよ。全然ちっともこれっぽっちもキレイさっぱりとね☆……反対、っていうか不快?うん、大不快。あはは、やだ、そんな顔しないでよ、お姉ちゃん。ごめんね、なお、正直で。だって、いつきさんだよ?よりにもよって。

――さくやさんなら、まだしもね。さくやさんなら……むしろ応援した、かも。ううん、どうかな、本当のところはわかんないけど。

――まぁでも、なおは?お姉ちゃんには甘々のスイートシスターですから?お姉ちゃんが決めたことなら。お姉ちゃんが選んだひとなら、反対なんてしないよ。しなかったでしょ?そのとき、どんな反応したかは覚えてないけど。

――まぁ……やけ酒は飲んだけどね、つき合うことになったって聞いた日の夜は。一人でかっくらいましたよ、ええ、ええ。てやんでいばーろーなんでなおじゃないんだよーちくしょー><って。うわ、お姉ちゃんすごい顔してる……。

――うん、じょーだん。じょーだんだよ。でも、ほんと、気持ち的にはそんな感じだったなぁ。まぁ、幸せそうなお姉ちゃん見てたら、まーいっかって気持ちになったけどね。ほんとだよ。

――大好きなお姉ちゃんの幸せそうな様子見て、自分も幸せを感じられないなら、良妹なんてやめちまえって話ですし。切腹ものだよ、妹道的に。切ないけどね、そりゃ。だってなおはお姉ちゃんが大好きなんだもん。今だって。ずっとずっと。

――え、知らなかったの?あるんだよ、妹道。なおはその求道者です、えっへん。

――???ああ、なお達の部屋出たときのこと?ううん、全然。怒ってないよ。お姉ちゃんといつきさんがつき合いだしたときから、そうなるだろうなって思ってたし。いつきさんには軽く殺意沸いたけどね☆わぁ、引かないで引かないでお姉ちゃん、軽くだよ軽く。

――他にも……あんまり見せつけられると軽くイラっとするけどね☆軽くだよ、軽く。うん、それはセーフなの、妹道的にも。そう、ありです。むしろ、可愛い妹のラブリーな嫉妬ってことで推奨されてます。……わ、お姉ちゃんが微妙な顔してる……どうしよう。

――とにかくっ、お姉ちゃんこれだけは覚えててね。忘れないで。お姉ちゃんの幸せがなおの幸せなんだよ。本当に。

――えーと、で、なんでこんな話になってるんだっけ。あ、そうそう、いつきさんだよね。いつきさんが来てないか、って。うん、この部屋には来てないよ。お姉ちゃん、なにがあったの?

◆証言:かえで先生
――あら、大幸さん、奇遇ね。駅前で会うなんて。ええ、先生はちょっとお買い物に。

――天藤さん?いえ、見てませんね。どうしたんですか?…………そういうことですか。ごめんなさい、力になれなくて。でも、そうなのね、あの天藤さんが。いえ、なんとなく……イメージと違うなって。

――まぁ、そうなの。意外ね。ええ、誰も天藤さんをそんなふうには思ってないと思うわ。学校の子達も……教員の先生方も。

――ええ、すごい人気ですよね、天藤さん。先生も相談されたことは一度や二度じゃないわ。クラスの子達から、どうして天藤さんと自分が同じグループじゃないんですかって。それに他の先生方から担任を羨ましがられたこともあるし。

――……えっ先生!?先生がどう思ってるか、ですか!?

――そんな急に、ええっと。ええっと……え、ええっ、いい、いい生徒だと思ってますよもちろん思ってます成績も優秀ですしね本当です苦手だなんて思ってないですちょっぴり苦手だーなんて思ってないです本当です本当あのハンサムさんなお顔でじっと見られると相手は10も年下なのに緊張してしまうからちょっぴり苦手だーなんて思ってません全然思ってませんからっ!

――はぁ……はぁ……。そ、そういうことなんですよ。ねっ。

――で、ええっとなんの話でしたっけ、そうそう天藤さんを見なかったかですよね、ごめんなさい見てないわ。

――えっ、それはもう聞いた!?そそそ、そうだったかしら!あわわ……そっ、それじゃ先生行くわね!はー忙しい忙しい……うん、先生は忙しいんですよーうん、ではね大幸さん、ふたり仲良く!

――………………………………………………前に天藤さんに見つめられたとき、うっかり遅刻を帳消ししそうになったことなんて他の生徒には言えないわ……。

◆証言:さくやさん
――いらっしゃい、あすか。悪かったわね、わざわざ実家まで来てもらって。ちょっと家を空けられなくて。どうぞ。

――……そんなきょろきょろしないで、あすか、無作法よ。座って。今、お茶を持ってこさせるわ。それで、いつきの話だったわね。メールで伝えた通り、うちには来ていないわ。

――それより、まずひとつ言っておきたいのだけどいいかしら、あすか。ええ、そう、本題に入る前にひとつだけ。あなたもいつきも現・恋人についての悩み相談を昔の女にするなんて最低のクズ行為だと知りなさい。

――……やめて、別に土下座させたくて言ったんじゃないわ、立って、あすか。立ちなさい怒ってないから。まったくなに震えているの、馬鹿ね。怒っていたなら家に呼んだりしないわ。

――???いつき?ええ、何度か。あすかのことで相談されていたわ。あの子は、本当に……。今回のこともそうね、むろん、あすかにも落ち度はあると思うけれど、いつきもどうしようもないわ。苦労、させられているわね。

――私は?私はどうだったかしら。そうね、困らされていた気もするけれど、怒るときは怒っていたから。あすかもきちんと叱ったほうがいいわね。叱ってる?何度も?わかるわ、あすかの叱りようじゃ通用しないでしょうね。

――それで話というのはいつきの行き先の心当たり、でしょう。なくはないわ。……ありがとう。さ、あすか、お茶どうぞ。美味しい。

――私といつきは中学の半ばからつき合いだして、そうね、5年程かしら。ああ、考えてみればあすかとのつき合いより長いのね。私といつきが付き合いだしたきっかけは聞いているのだった?そう、襲われたのよ、いつきに。そして、私が裁縫鋏でいつきを刺した。そういえば、この部屋ね。この私の部屋、そこのベッドの上で。

――どうしたの、あすか、顔色が悪いわよ。お茶、口に合わなかった?そう、ならいいのだけど。また震えているから。

――ふふ、なぜそれがきっかけになるのかと言いたそうな顔ね。……あのとき、一瞬だけ、私は女にされたのよ。「あすかを想うさくや」ではなく、その瞬間だけはあなたのことも頭から消えて、ただの一人の女になっていた。あえて言うなら、それが理由かしらね。

――どうしたの、今度は顔が赤いわ、あすか。安心なさい私といつきはまだ未経験よ。いつきは、結局、私を抱く勇気はなかったんでしょうね。最初で最後の勢いだったのよ、あれが。そのあと、また求められていたら?そうね、どうだったでしょうね、ふふ。

――私といつきの話はこれくらいでいいわ。

――さて、いつきの行き先の心当たりだった?恐らく、なおの……元は私達の部屋だった部屋よ。いないと言われた?それはあなたの聞き方が悪いわ、もう一度行って、こう聞いてみなさい――……

*****

 

 

今年の冬は雪がよく降ります。

 

 

*****

長い話が終わって、わたしはさくやさんの家、武田家から退散した。

最寄の駅までの道は、すっかり雪に覆われてる。

もう夜遅くで、吐く息の白さがゆっくり広がって夜気に紛れて消える。なるほど、さくやさんの推理は単純にして明快だった。いつきは寒がりだから寮から出てないはず、と。そういや冬生まれだっていうのに、寒いの苦手って朝いつもぐずってるなぁとわたしは思う。

「……そのわりに、冬でも足だしてるあの格好はなんなんだ。いい女のプライドか?」

呟いて、いつきのことを思って、わたしはコートのポケットからスマホを取りだす。メール画面を表示。

『さがさないでくださいTT』

〝TT〟これはきっと泣き顔の意味で。今朝、届いてたメール。そして一緒に生活してる部屋から、いつきの姿は消えてた(学校まで休みよった!)なんでっていうのはわかってる。うん、わかってるんです……ようするに問題は。

今日が〝1月12日〟だってこと。

忘れてました、いつきの誕生日。1月11日。1並び。ものすごく覚えやすい、ん、ですが。

(い、いやいやいや、前日まで覚えてたし、ちゃんとプレゼントの準備もしてたんだよ!いつきが欲しがってたレアなレトロゲー、いっしょーけんめー探して買っておいたんだけど!だけど、さぁ!)

なんせ……その……看護学生2年の冬ってのは、なかなかにハード&ロックでしてね(ロックはわかんないけど)学校で居残り補習くらって、遅くに帰って、へろへろのへろで、夜渡そうと思ってたプレゼントのこと、忘れて……そのままバタンキューしちゃったわたしも悪いんだけど。

「するかね、家出!」

雪がちらつく夜空に声を上げるわたし。昨夜、やっぱり一晩中ゲームをしてたいつきは、そのまま夜の間にどっか行っちゃってて。今に至る。なおちゃんの部屋?さくやさんはそう言ったけど、確信あるみたいだったけど、本当かなって思う。

「聞き方が悪いって……そんな、魔法の合言葉みたいな」

まぁ試してみるしかないんですけど。

「……や、やー、なおちゃん」

そんなわけで、再び現・なおちゃん部屋にやってきたわたし。ドアの前。廊下。チャイムを鳴らしたら、すぐにドアが開いて、なおちゃんが出てきて。ちょっと不思議そうな顔。

「???どうしたの、お姉ちゃん」
「あ、あー……いつき、まだ、見っかんなくてさ」
「……ふぅん、そうなんだ」
「えと、そのね……、なおちゃん」
「うん」

さくやさん直伝、魔法の合言葉!

「うちの、ゴミクズ、来てないかな。えへへ」
「来てるよー。なんだ、あの人間の言葉喋るゴミ、いつきさんだったんだ。おーい、ゴミクズさーん」
「…………………………るせー。ひとをゴミ呼ばわりしてんじゃねー」

あっさりなおちゃん。
そして、のそりと部屋の奥から姿を現したのがいつき。
不服そうな、なんだかバツの悪そうな顔で。

(ビンゴだったー!!なんか色々いつきにもなおちゃんにもさくやさんにも言いたいことあるけど、言葉になんねー!!)

「お姉ちゃん、言葉遣い」
「ちょ、なおちゃん、心の声読まないでもらえるかな!」
「あはは。お姉ちゃん、わかりやすいから」
「………………よー、ヌケ子」
「あ、うっ、うん、いつき」
「はいはい、二人とも。なおが関わるのはここまでだよ、続きは部屋に戻ってやってね。いつきさん、忘れないで貸し1だからね。考えとくから」
「ちぇ、わーってるよ……」

なおちゃんの言葉に渋々頷くいつき。取引、二人の間になんらかの取引が?まぁそうでなくちゃ、なおちゃんがいつきに協力したりしないか。えー、それよりですね、なんでだろう。

(い、いつきの借りなのに、妙にわたしが胸騒ぎするよ……)

嫌な予感、と言いますか。

「さ、出た出たいつきさん。じゃ、お姉ちゃん、また明日学校でね☆」

ちゅっ、なんて、なおちゃん投げキッス。小悪魔に磨きが!

*****

で。

部屋に戻りました、わたしといつき。灯り点けて。いつきは、ぷいっとそっぽを向いてて。どうしたもんか、とわたしは考えて、ともかくプレゼント渡しちゃおうって学習机に歩みよって、引き出し開けて、前々日から用意してた包みを取りだして、いつきに。

「あのっ、遅くなってごめん、これ、誕生日プレゼント!」

いつきに差しだした。
いつきはちらっと包みを見ただけで。すぐにまた。
ぷいっ。

「もう過ぎてるし、あたしの誕生日」
「うっ、だから、ごめん。昨日、バタバタしてて……」
「すっげー楽しみにしてたのに」
「……う、うん、だから、ごめんって」
「あたし、傷ついた、あー傷ついたー」

すっかり拗ねっちゃってる、わたしの恋人です。まったくもう。

「……中身は?」

ちろん、と再度包みを見やって、いつき。

「あっ、ほら、ゲーム。いつきが欲しがってた」
「えっ、あれ!?」
「そうあれ、たぶん、合ってると思う。わたし、探して――」
「……………………っ」

きらきらっと一瞬いつきはメガネ越しに瞳を輝かせて。
でも、また。
――ぷいっ。

「足りねー」
「なんだってー!Σ( ̄□ ̄)」
「だって、それ昨日の誕生日プレゼントじゃん。一日遅れた分が足りない」
「わっ、わがままー……」

こっちは、きらきらっじゃなくて、ぎりぎりっと歯噛み。だっ、大体忘れられてるーと思ったら、黙ってないで言えばよかったんじゃないの!とかこっちにも言い分はあるのに。反論したい、言い返したい、調子に乗るなって叱りたい、いや、こっちまで拗ねたらダメだーとか、いろいろ。

いろいろ、ぐつぐつ頭が煮えたぎって。わたしは。

「じゃあ、じゃあ、じゃあ、じゃあっ…………」

――『私といつきは未経験よ』さくやさんの言葉が頭をよぎった。

ええ、わたしといつきも未経験です。まだ。キスはさんざんしてるのに。何度だってされてるのに。冗談ぽく押し倒されたり、む、胸も触られたりはしてるけど。その先は。まだ。なんでかなって、ちょっと思ってて。

――『私を抱く勇気はなかったんでしょうね』さくやさんの言葉。

いつきは、わたしを抱こうともしない。
勇気がない?
だって本当のいつきはこんなに小心者だから。

「抱けばいいじゃん、わたしのことっっ!!」

(わぁ言っちゃった!><)

ぼかんっと頭に血が上るわたし。顔まっか。だってだって。

好きなひとに触れられて、嬉しくない女なんていない。好きなひとと最後まで〝する〟のが嫌な女なんていない。いつきは一瞬だけ驚いた顔して、すぐにマジな瞳でこっち見てる。

「――……いつき」

押し倒されました。ベッドに。二段ベッドの下、わたしのベッドに。わたしの手からプレゼントの包みを奪って、上のベッドに放り投げて、いつきはそのままのしかかるみたいにして。そのしなやかな体を、その体の重みを感じながら、わたしは恋人を見上げる。いつきはなにも喋らない。唇が重なった。すぐに離れた。軽いキス。間近からわたしを見てくる青い瞳。ほんの短いキスだったのに、わたしは酸欠になったみたいに呼吸が乱れる。体が熱い。なぜだか、急にものすごく恥ずかしくなる。わきの下の汗を自覚する。恥ずかしくなる。また、キスされる。息が止まる。心臓が。跳ねてる。

(わー恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!下着替えたい!)

意味のわかんないことを思う。それから。

「……そういや〝した〟ことなかったな、あたし達」

いつきの声。頷くわたし。
わたしは見上げてる。いつきの顔を。
ふと思う。

(そっか、夏までこの部屋でなおちゃんと暮らしてたんだ)

だからか。いつきとする〝それ〟は、

(やっぱり罪の味がするのかな――……)

甘く。どこまでも深く。

*****

今年の冬は雪がよく降ります。

さくやさん家からの帰りには、ちらつくくらいになってた雪もまた勢いよく降りだしてた。深夜。明日の朝には、この街ぜんぶ銀色の世界になってそうで。

で……。

「おい、ヌケ子!気合入れて転がせ、そっち小さいぞ!」
「わ、わかってるってば!」
「見ろ、あたしの雪玉、もうこんなに大きいし」

自慢げにいつきが言う。白藍寮の屋上。今日一日降って、今も降ってる雪で白く覆われてる屋上で。わたし達は、せっせと雪玉を転がしてます。転がして、転がして、雪玉をおっきくする作業中。

えーと?なにやってるんだっけ、わたし達。

「ヌケ子とさ、〝した〟ことなかったよなー雪だるま作り」

呑気ないつきの声。……そうなんでした。ザ・健全!

あの後、完全にその気になってた〝おっけぃモード〟のわたし(いや、まぁ、その……////)から急に体を離して、いつきはわたしの手を引いて起こして、いきなり宣言「よし、作るか雪だるま!」。

そして、我々in屋上。あ、夏の終わりに花火したなぁ、ここで。

(これってアレなのかなーその気になった女に恥かかせてーとかそんなふうに怒っていいところなのかなーなにが雪だるま作り〝した〟ことないだよーなんなのもーいつきのへたれーこんじょなしーこれじゃわたしがなんかーわたしがなんかーただの〝したがり〟みたいじゃんかー)

わたし、頭の中ぐるぐると迷走中。ほっぺた、ちょっと赤(寒さのせいにしとく)

「ほんと、いつきって……いつきって、さぁ……」
「あん、なんだよ?――おい、手止まってんぞ、動かせ!」
「はいはいはいはい、やりますよ!」ごろごろ。

わたしの呟きに耳聡く反応したいつきに、乱暴に声を返す。わたしは呆れと、それからなんともいえない収まりの悪い感情が体の内側に残ってて。わたし達の関係が先に進むのって(進展?進歩?)一体いつになるんだろう、なんて思う。わかってたけど。わかってたけど思った以上に厄介だ、わたしの恋人は。うん。

夜の屋上に雪が降る。月明かりにきらきら光る。
楽しげに雪玉を転がしてるいつきは、まるで子供みたいで。
ちょっと微笑んでしまいそうにもなるけど。

(……ていうか、ガキだよガキ!)

ねーいつき!とわたしは呼ぶ。
かっこよくって、かっこわるい、わたしの恋人を。こっちを向く、おとなっぽくてきれいな顔。

「わたし達ってさ、もしかして世界で一番ピュアなカップルなんじゃない!?」

いつきは「気づくのおせーよ、バーカ」って笑った。
おとなっぽくてきれいな顔に。
悪ガキみたいなとびきりの笑みを浮かべて。

だから。

(くっ、4月のわたしの誕生日には絶対こっちが押し倒してやる……)

思わず、そんな不埒な誓いを立てるわたしでした。オトメ心?

*****

雪だるま完成。そして。

「あ、あのさ、そういやいつき」
「あん?」
「えと、なおちゃんが言ってた貸し1って……」
「あー、ついさっきメール来てた」
「なななんて!?」
「『お姉ちゃんのコス写真で、ぷりまの抱き枕よろしく』だって」
「なんですと!?」
「やー、楽なもんでよかったよ。協力よろ♪」
「お断りだ――――――――――――――――――っっ!!」

…………断りきれる気が、しません……。

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